(Leaf Visual Novel Series vol.3) "To Heart"Another side story

メカ耳少女の居る風景

第七話
『つるぺた元帥、北へ』の巻

Written by -->MURAKUMO AMENO HOME PAGE -->SEIRYU-OU KYUUDEN

Original Works "To Heart" Copyright 1997 Leaf/Aquaplus co. allrights reserved


 この小説は、販売・株式会社アクア、企画・制作・リーフのウィンドウズ95用ヴィジ  ュアルノベル・ソフト「ToHeart」を基にした二次創作物であり、作中に使われる名称  は一部を除いてほぼフィクションです。  したがって、ゲームの公式設定・裏設定に準じた物語ではないために、誤解を招く場合  等がありますが、その場合はご容赦願います。  ちなみに、  この小説の中に出てくる少女たちと会いたいと思ってくれた方々には、つつしんで「探  せば会える」とだけ言っておきましょう。



 今回のネタはマニアックです。ご注意下さい。



平盛○○年11月30日(月)・天気・・・大吹雪

 「声の変更・・・ですか?」
「そうだ。」
 何だか軽い既視感を感じてしまう会話を、寝る前の俺達はベッドの上で向かい合いなが
 らくりひろげていた。
 俺がこんな事を言い出したのは、昨日、こいつを元帥に直接合わせた時、
「音声の設定、変更しなきゃ駄目じゃん。」
 と言われてしまったからだ。
「・・・そんなスットコドッコイな機能があるとは思わなかったからな・・・」
「一応、有名な声優さんのボイスデータがいくつか入力されてますから、変更は可能です
 が・・・その中に、お気に召す音声があればいいのですが。」
「そう、か。」
 俺もアニメに傾倒している人間だから、声優について多少の知識はある・・・が、所詮そ
 れも「何も知らない人よりはまし」程度のものでしかない。
「ちなみに、今は誰の音声だ?」
「はい、今はゼロチさんと同じ、岩○潤子さんになっています。」
 どうりで可愛い声だと思った。
「完っ璧に元帥の趣味だな・・・」
「基本らしいですぅ。」
「何の基本じゃい。」
 まぁ・・・いつも一緒に居るんだから、自分の好みの声の方がいいと言うのもうなずける
 所だ。
 よし、
 おれもひとつ、こいつの声を自分好みに調整してみるか。
「よし、お前の中に入ってる音声データを頭から言ってくれるか?」
「はいっ!」
 相変わらずの元気な返事と共に、少し長い熟考時間に入る。
「検索、終了しました。」
「おう。」
「敬称略で言います。えーと、神○明、塩○兼人、○山敬、古○徹、玄田哲○、飯塚昭○、
 ○塚明夫、○寺宏一、小○清志、鈴置・・・どうしました?」
 頭から布団に突っ込んでいる俺を気遣うリュース。どうせなら、他の事を気遣って欲し
 い・・・
「サンプル音声で聞いてみますか?」
「あ、ああ・・・じゃあ、○谷明いってみようか。」
「はい、」
 夜中の俺の部屋に、叫び声が轟く。
「チエェンジ・ゲッター1!スイッチ・オンッ!!」
 うわー男らしい。涙が出るぜ。
「・・・次、玄田○章。」
「サイバトロン軍団!トランス・フオォームッ!!」
「古谷○。」
「僕が、僕がガン○ムを、一番うまく使えるんだあぁーっ!!」
「鈴置○孝」
「左舷!弾幕薄いぞ!なぁにやってんの!」
「塩沢○人。」
「あの壷はいいものだぁーっ!、」
 妙にガ○ダムネタが多いな。
「・・・もういい。」
 思わず頭を抱えてしまう。
「大丈夫ですか?ご主人さま。」
「小林○志の声で心配するな・・・○ビルの塔に向かいたくなる・・・」
 偏頭痛がひどくなってきた。
「何でこんなデータしか入ってないんだ!女性はないのか女性は!」
「は、はい、あります!」
 リュースは一息ついてから、サンプル音声を「叫んだ」。
「ザンボットォ・ムゥーン・アタァーック!!」
げしっ
「あぁぅっ」
 間髪入れず、枕を顔面にぶつける。その下から聞こえたのは、いつものリュースの情け
 ない声だ。
「じ、女性ですぅ。」
「大山のぶ○は認めんっ!!」
 本気で頭が痛くなってくる。
「リュース・・・お前、何か俺に恨みでもあるのか?」
「えぇっ?そ、そんな事ないですぅ。」
「じゃあ、んーだそのラインナップは?あぁ!?何で○谷明とか○沢兼人の声の女の子と一
 緒にいなきゃならんのじゃ!!」
「えぇーっ!お、お気に召しませんでしたか?」
「召すかっ!」
 頭から断じられて、リュースはしきりに考え込んでいる。
「おかしいですねぇ・・・元帥が、『雨野は神○明系の声が大好きだ』って・・・」
「違う。」
 即答0.5秒。
 この即答具合も、我ながら既視感のもとだと思う。
「少なくとも、いつも一緒に居る女の子にしゃべって欲しい声ではない。」
「そ、そうですか・・・」
 しょんぼりとするリュース。・・・ちょっと、つっこみが過ぎたかな。
「・・・すみません・・・」
「・・・あ、謝る事じゃねぇよ・・・別に、お前が悪い訳じゃないからな。さて・・・女性声優部
 門、いってみようか!?」
「は、はい!」
 気を取り直して。
「で、どんな声があるんだ?」
「はい、敬称略でいきます・・・岩○潤子、丹○桜、桜○智、国府田○リ子、久○綾、○上
 喜久子、冬○由美、椎○へきる、笠○留美、宮○優子、島本須○、富○みーな、横山○
 佐、白鳥○美、笠原○子、三○琴乃、南○美、富沢美○恵、鈴木○仁、吉田古奈○、横
 沢○子、半場○恵、金月真○、鷹森○乃、生駒○美、本多○恵子、笹○優子、高○麗、
 大谷○恵・・・」
「きりがないな。」
「はい、今ご活躍されている女性声優さんは大体入ってますから・・・あ、あと『別枠』と
 『論外』が有ります。」
「『別枠』って?」
「はい、林原○ぐみさんは個人で5パターンありますから。」
「成る程・・・『論外』は?」
「田中○弓、野沢雅○、TA○AKO、大山○ぶ代、つかせ○りこ・・・」
「分かった、もういい。」
 確かに・・・この面子での声は想像したくない。
「しっかし多いな・・・サンプル音声を聞いてるだけでも朝になっちまうぜ。」
「元帥さんの所にあった音声データの50%を持ってきましたから。」
「・・・これで半分かい。」
 おそるべし、元帥。
「何つーか、こう・・・決め手が無いよな、決め手が。」
「決め手・・・ですか?」
「そうそう、『この声がぴったり!』てのが無いから・・・って、良く考えりゃ当然か。」
「?」
 こいつのイメージから決めるんじゃなく、しゃべらせればそれがこいつの声になるんだ
 もんな。
「よし!ここは運試しだ!!」
「な、何でしょう?」
「リュース、ランダムで音声を決めてみろ!」
 こうなったらどの声も同じだ!
「え、は、はい!」
 リュースは一瞬戸惑ったが、意を決したかのように下を向いて両のこめかみに人差し指
 をあて続けた。
 こいつお得意の熟考ポーズだ。
・・・・・・・・・
 十秒ぐらい経ったころ、
・・・ふっ
 顔を上げ、両手を膝に置いて微笑む。
 可愛い表情だ。
「ご主人さま・・・だ、大好きです。」
ばごっ!!
「はうぅっ」
 瞬間、
 俺は枕を使ってリュースに見事なアッパーカットを決めてしまった。
ばふっ
 倒れ込んだところから、
「・・・ひいぃーん」
 いつものこいつの泣き声がした。
「悪いとは思う・・・思うがな・・・」
ぼふっ
 力任せに枕をベッドに叩き付ける。
「ぬぁーーーーーーーーーにが哀しくてシャア・アズ○ブル声の池田秀○に告白をうけな
 きゃいかんのじゃ!!候補から男性声優を外せ!」
 鼻を押さえながら起き上がるリュース。
「け、けっこう勇気がいったんですが・・・」
「お前は真剣なのかも知らんが、その声に『俺もだよ』と答えなきゃならん者の身にもな
 れっ!」
 落ち着け、落ち着け・・・
「とにかく・・・女性陣に限ってランダム選択をしてくれ。」
「ふゃい・・・」
 再び熟考モードに入ろうとするところに、
「『論外』も外してな。」
 と付け加える。
「は、はい。」
 熟考に入るリュース。
 こいつがTAR○KOの声でしゃべる所なぞ、見たくないからな。
・・・・・・・・・
 もう一度熟考に入って、十秒ほど経ったころ、
ふっ
 顔を上げ、両手を膝に置いて微笑む。
 ・・・またとんでもない声だったら、強制電源落としの刑に処してやる・・・
 そんな考えが頭をよぎった時、

「これでどうでしょう、ご主人さま。」

 鼻にかかったような声が、俺の心臓をわしづかみにした。
「・・・・・・」
 一瞬、完全に思考が止まった・・・それ程、その明るい表情に合った可愛らしい声だった
 のだ。
「・・・ご主人さま?」
 独特の抑揚が、より一層俺の鼓動を早める。
「あ、あぁ・・・それ、誰の声だ?」
「はい、こおろぎ○とみさんです。」
「そうか・・・」
 運試しもしてみるもんだな・・・リュースにぴったりの声だ。
「よし、今日からそれがお前の声だ。いいな?」
「はい!分かりました。では・・・」
「?」
 いそいそと、布団に潜り込むリュース。
「音声設定を全般的に変更いたしますので、8時間ほどお待ち下さーい。」
「へ?」
 俺がその言葉の意味を理解した時には、すでにリュースは寝息を立てはじめていた。
 野比の○太なみの寝つきのよさだ。
「・・・・・・」
 まぁ、いいか。
 ・・・・・・
 ・・・でも・・・
 いやいやいや。
 よこしまな考えを振り捨てる。
「全く・・・」
 リュースの横に入る時、
「おやすみぐらいは・・・言わせろよな・・・」
 と、その幸せそうな寝顔に話しかけ、電気を消した。


               # # #


 「さ、寒い〜」
 暖房の壊れた部屋で、元帥はベッドに潜り込んでいた。着ているものも綿入りはんてん
 と厚手の靴下、とどめに二重のズボンと言う完全武装である。
「ゼ、ゼロチ〜早くお使いから帰ってこ〜い。人肌暖房してくれ〜」
 その頃外では、
びゅおおぉぉ・・・
「ふえーん、吹雪が強くて、す、す、進めませーん・・・」
 プリティな岩○潤子の泣き声が、悲しく吹雪にかき消されていた。
「ふえぇーん・・・」
びゅおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ・・・



                               第七話 END



次回予告・雨野
 リュースのやつ、さっさと寝ちまいやがって・・・まぁ、結局俺のせいなんだけど・・・しゃ
 ーねぇ、明日は遊びたおすから覚悟しろよ、リュース!さーて、な・に・を・し・よ・
 う・か・なぁ〜・・・って、俺はなに一人で盛り上がっとるんじゃあっ!!
 次回、メカ耳少女の居る風景『Fight!Fight!Fight!』
 それでは、メイドロボファイト、レディー・・・ゴォッ!!


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