(Leaf Visual Novel Series vol.2) "KIZUATO" Another Side Story

「痕〜始めから終わってる物語〜」

Written by -->MURAKUMO AMENO HOME PAGE -->SEIRYU-OU KYUUDEN

Original Works "KIZUATO" Copyright 1996 Leaf/Aquaplus co. allrights reserved



               # # #


 第一話「接触編」

 「ああ・・・あっちいな・・・」
 近頃、こよみの上ではすでに秋だと言うのに、時折真夏日のような日が続く。こんな時
 に東京のアパートに閉じこもっていたら、脱水症状で干物になっていたことだろう。地
 上最強の生物である「鬼」も、大自然の試練には勝てないらしい。
 俺・・・柏木耕一は、連休を利用してこの柏木家に遊びに来ている。十時ごろに起きた俺
 は、そんなふうに時期外れな暑さにうなりながら、いつもの通り遅めの朝食を食べよう
 として居間に向かった。
 その時、
「きゃあぁ〜〜っはっはっはっはぁ〜」
 居間の方から千鶴さんの悲鳴とも笑い声ともつかぬ奇声が聞こえた。
「どうしたんだ!千鶴さん!」
 慌てて居間に駆けつけた俺が見たものは、口から血の筋を流しながら、腹部を押さえて
 動かなくなっている千鶴さんだった。ちゃぶ台の上の、朝食にかかっているふきんが飛
 び散った血で紅く染まっている。
「笑い死んでいる・・・一体、何が起こったんだ!?」
 そう言って千鶴さんを抱きかかえた俺は、千鶴さんの正面にあったテレビがついたまま
 である事に気付いた。その画面に映っていたものとは・・・「NHKニューススペシャル
 ・新生ロシアによる五ヶ年計画の始動」と書かれた番組タイトルだった。
「・・・・・・即死か・・・」

第二話につづく


               # # #


 第二話「胎動編」

 何とか一命をとりとめた(!)千鶴さんを部屋のベッドに寝かせた俺は、今度は激しく
 鳴らされる呼び鈴に向かって駆け出した。
「はいはいはい、今度は何だってんだよ!」
 毒づいた俺を出迎えたのは、梓の後輩のかおりちゃんだった。いつもは俺に対して敵対
 的な様子のこの娘だが、玄関で目に涙を溜めながら立ち尽くしている姿は、他の女の子
 と同じようなかよわげな印象を受ける。
「・・・た、大変なんです!先輩が・・・梓先輩が・・・」
「落ち着いて・・・梓が一体、どうしたんだ。」
「体育祭の応援練習中に・・・日射病で、倒れちゃって・・・」
 俺は、不謹慎にも大きなため息をついてしまった。このかおりちゃんの様子から、もっ
 とひどい事になっていると思ったからだ。・・・しかし、梓が日射病か・・・珍しい事もある
 もんだな・・・
 おっと、いけない、いけない。日射病とはいえ立派な病気だ。急いで手当てをしなけれ
 ばならない。
「それで、梓は何処に?」
「外の日陰に寝かせてあります・・・だから、だからあんな格好したらだめだって言ったの
 に・・・気合いが入るからって・・・」
 俺はかおりちゃんの手を引いて、玄関を出た。
「ごたくは後だ!とにかく涼しい格好をさせて、寝かせなくちゃ・・・梓は?」
「あそこです!」
 かおりちゃんが指差した木の根本に、梓は熱っぽい顔をしながら横たわっていた。
「・・・こ、この服は・・・」
 俺はその場で絶句してしまった。梓は応援団の団長が着るような、すその異常に長い男
 子学生服を着ていたのだった。
「お・・・鬼のガクラン!」 

第三話につづく


               # # #


 第三話「発動編」

 梓を部屋に運んだ俺は、後の看病をかおりちゃんに任せて(・・・)千鶴さんの様子を見
 に行った。だが、千鶴さんは寝息を立ててぐっすりと寝ているようなので、俺は部屋に
 入らずに、そのまま千鶴さんを寝かせておいた。
 部屋の扉をそっと閉めたとたん、タイミング良く腹が大きな音を立てる。
「そう言や、朝飯も食ってないんだよな・・・」
 そう思った俺は改めて居間へと向かったが、ちゃぶ台の上に乗っている朝食には千鶴さ
 んの吐血の後がしっかりと残っていた。鬼の血はふきんを通り抜け、その下にあった白
 米を紅白に染めていたのだ。
「・・・めでたい。」
 と、馬鹿な事を言っている暇はない。おかずの様子から見て千鶴さん・作である朝食を
 始末して、何か食べ物は無いかと探してみようとするが・・・
「う〜ん親戚の家とはいえ、台所を意地汚くあさるのも気がひけるなぁ。」
 仕方が無い、カップメンでも買ってくるか・・・と思って台所を出ようとした。
カラカラカラ・・・
 玄関の開く音が聞こえ、続いて
「ただいま・・・」
 かすかに声が聞こえる。この声は、楓ちゃんに間違いない。
「おかえり、楓ちゃん」
「あっ・・・耕一さん・・・た、ただいま。」
 廊下に顔だけを出して出迎える俺に、ちょっとだけうつむいて応えてくれる楓ちゃん。
 無口で無愛想に見えるけど、その頬が微かに紅くなっているのを俺は見逃さなかった。
 そんな可愛い楓ちゃんを見ている内に、俺はある事を思い付いた。楓ちゃんの前に立っ
 て、顔を覗き込む。
「ねぇ、楓ちゃん。お願いがあるんだけど、いいかな?」
「お願い・・・ですか?」


               # # #


 楓ちゃんは、しぶしぶながらも俺のお願いを聞いてくれた。居間で待つ俺の顔が自然に
 にやける。
 千鶴さんや梓、そして初音ちゃん。この柏木四姉妹の中で、唯一人料理に関しての話題
 を聞かない娘・・・それは、楓ちゃんだ。今は、そんな楓ちゃんの手料理が食べられる絶
 好のチャンスだと俺は思ったのだ。
「あんまり自信は無いですけど・・・」
 と言っていたが、千鶴さんのような破壊的なものでない限り、俺は「うまい!」と言っ
 てあげるつもりだ。
 だが、
 ここまで考えて俺はふと気がついた。
 千鶴さんも、梓も、「鬼」を使ったこの作者の下らんギャグの餌食になって、二人とも
 ひどい目に会っている。もし、次の餌食が楓ちゃんだとすると・・・このシチュエーショ
 ンは、ギャグをぶち込むのに最適な舞台設定じゃないか!
「・・・いけない!」
 キャラクターと言う立場的な危機感を覚えた俺は、三たび柏木家の廊下を駆け出した。
 台所が近づく。
「楓ちゃん!」
「は、はい・・・何ですか?」
 さっきとは逆に、楓ちゃんがひょこっと顔を出す。
「今、出来ましたので・・・持っていきますね。」
 心の中で「くそっ!間に合わなかったか・・・」と舌打ちする俺に、楓ちゃんがお盆を持
 って向かってくる。・・・はたして、そのお盆の上に乗っていたものが何なのか。俺は膨
 れ上がる嫌な予感を押さえつつ、それを見た。
「あ、あの・・・すみません、私、これしかできなくて・・・」
 顔を真っ赤に染めた楓ちゃんが差し出すお盆の上には、何とも不格好な米粒の集合体が
 二つ存在していた。
「・・・え〜と、楓ちゃん。これは、一体・・・」
 震える指でそれを指した俺の問いに、楓ちゃんがはにかみながら答える。
「・・・・・・おにぎり、です・・・・・・」
 瞬間。
 世界がぐにゃりと歪んだ。

                                  完


               # # #


 キーボードを叩く私・・・Kちゃんこと物書き専業・雨野村雲の後ろで、綾波あゆ氏が満
 足げにうんうんとうなづいている。
[雨野]・・・あゆ先輩
[あゆ]ん?な〜に
[雨野]先輩に監修してもらった、この楓ちゃんパート・・・ぜんぜんギャグになってない
    んですけど。
[あゆ]ん〜〜〜〜、許す(爆
[雨野]そ、そんな・・・姉二人をあんな目にあわせといて、楓ちゃんはこれですかぁ!?
[あゆ]楓ちゃんイイよ(マジ
[雨野]・・・いや・・・それは・・・分かってますけど・・・
[あゆ]楓ちゃん可愛いじゃないですか。そんな可愛い娘に酷い事なんて出来ないじゃな
    いですか(笑)
[雨野]結局キャラびいきじゃないですか!・・・千鶴さんファンや梓ファンから苦情きま
    すよ。
[あゆ]苦情来るよぉ〜。ぼくわぁ〜千鶴&梓ファンを相手取るよぉ〜(大泉(爆
[雨野]ここを地方ネタで埋めつくす気ですか!仮にもネットは全国区なんですからね!
[あゆ]え〜、でも普段から北海道ローカルなネタ使ってますよぉ(^^;みんな引きますけ
    どね(笑)
[雨野]ネタを考えて下さいって言ってるんです!全くもう・・・あゆ先輩は〜本当に〜ダ
    メ人間だと
[長瀬警部]あ〜雨野くん
[雨野]はいはい。
[長瀬警部]私からも一言・・・いいかね
[雨野]どうぞどうぞ。
[長瀬警部]・・・ダメ人間!!
[あゆ]何て人を連れてくるんだ(T_T)
[雨野]いや、偶然通りかかってくれたもんで・・・あ、長瀬警部、どうもご苦労様でした。
[長瀬警部]本編に登場させてくれる方が良かったんだがね・・・ぶつぶつ・・・
[雨野]いやぁ〜はっはっは(誰が好き好んでおっさんなぞ出すか!)
[あゆ]ん〜、長瀬警部、鬼じゃ無いからな〜(笑)しかし、長瀬警部が出て来てもロー
    カルネタなのね(^^;
[雨野]誰がそっちに話を持っていったと思ってるんですか!誰が!!
[あゆ]オレジャネ〜(笑)ま〜とりあえず話を元に戻しますか(^^;
[雨野]・・・いやぁ、でも、改めて話す事なぞ無きに等しいんですけどね。
[あゆ]ひどい人だ(尊K
[雨野]だって、ある日ふと思い付いたバカネタを、形にしただけなんですよ!?そんな物
    にこれ以上言う事何て無いでしょう。
[あゆ]え〜〜嘘つきだなぁ。言う事あるでしょ(ニヤリ
[雨野]なっ・・・何がですか?
[あゆ]え?だって一人足りないじゃないですかぁ
[雨野]うっ・・・。
[あゆ]千鶴さんに、梓に、楓ちゃんに・・・
[雨野]い、いやぁ・・・その・・・はちゅねちゃんラブラブ〜
[あゆ]ぉぃぉぃ(^^;そんなの、さっきの俺と変わんないやん
[雨野]うぅっ・・・分かりましたよ、ノルマを果たせって言うんでしょ、ノルマを。
[あゆ]期待してるよ〜(信頼
[雨野]仕方がない・・・ヘーイ!照明さん!!
パチン!
 私の指が鳴ると同時に、部屋の片隅に(何処のだ)スポットライトが照射され、そこに
 立っている初音ちゃんを照らす。
「あれ?ここは・・・あたし・・・あれぇ?」
 かわいいクリーム色のエプロンと同色の鍋つかみ、そして頭にかぶったふきんから察す
 る所、どうやら食事の準備の最中だったらしい。突如異様な空間に召喚された驚きから、
 まだここの文体になれていない。
[あゆ]あ〜あ、力技だなあ(苦笑
[雨野]ほっといて下さい!・・・あ〜初音ちゃん?
「はい、何ですか?」
[雨野]文体が違ってるよ。
「あっ!いけない。い、今変えますね・・・」
 うーん・・・恥ずかしがってもじもじする姿も凶悪に可愛い。
[初音]えっと・・・これでいいですか?
[雨野]上出来上出来。
[あゆ](爆
[雨野]俺の近くで爆死するのは止めて下さい。初音ちゃんに被害がいくでしょ。
[あゆ](超(爆
[雨野]・・・わざとやってますね
[あゆ]えっ?ふつ〜ふつ〜(ま〜ね
[雨野]あのねぇ!
[初音]あのー、あたし、何すればいいんでしょうか。
[雨野]あ、そうだった。ちょっと初音ちゃんにお願いがあるんだけど。
[初音]何ですか?
[あゆ]一緒に花火をやって
[雨野]その後、我々の想像の範疇を越えたおぞましい事を・・・
[初音]きゃあーーーっ!
[雨野]先輩っ!!
[あゆ]ま〜ね(ま〜ね
[雨野]いつか呪ってやる・・・そうじゃなくて、あ、そんなに怯えなくていいから・・・こっ
    ちに来てくれるかい。
[初音](おずおず)
[あゆ](ひたひた)
[雨野]あんたは来んでええ。
[あゆ]ぐすん(T-T)
[雨野]・・・初音ちゃん、いつも耕一を呼んでいる呼び方で、俺を呼んでくれないか?
[初音]えっ!?あ、はい・・・・・・お兄・・・ちゃん。
[雨野]うおおぉーーーっ!!
[初音](びくっ)
[雨野]いいっ!いいよーっ!萌え萌えだあぁーーーっっ!!うっしゃあーーー!!
[初音]あ・・・はぁ、
[あゆ]もう壊れまくり。どうでもいいけど、ノルマ果たしてないやん。
[雨野]え?もう果たしてますよ!?
[あゆ]何処が
[雨野]初音ちゃんは言ったじゃないですか・・・「おに」いちゃんって。
[あゆ]・・・
[雨野]・・・
[あゆ]・・・・・・
[雨野]・・・・・・
[あゆ]・・・・・・・・・
[雨野]・・・・・・・・・
[初音]あれ?どうしたんですか?
がばっ
[初音]きゃっ!!
[あゆ]おいおい、何してんの
[雨野]何って・・・見ての通り、初音ちゃんを抱いてんですよ。
[初音]あ・・・あの・・・その・・・(赤面)
[あゆ]うやむやにする気だな。僕は〜その手には〜のらないねぇ〜
[雨野]ほほう・・・これでも?ヘーイ照明さん!ワンスモア!!
パチンッ
 私の指が鳴ると、さっきの初音ちゃんと同様に部屋の片隅に(だから何処のだ)スポッ
 トライトが照射され、そこに立っている楓ちゃんを照らし出す。
[楓]・・・何ですか?
 きちっとした制服姿といい、瞬時にここの文体になじむ所といい、やはりこの娘はただ
 ものでは・・・
がばっ
[楓]あっ・・・
[雨野]こらこらこらっ!説明の最中だと言うのに!(ダミ声)はいはいはい〜踊り子さ
    んに抱き付くのは〜おやめ〜くださ〜い。
[あゆ]ヤダっ
[楓]・・・・・・(ぽっ)
[雨野]さすがは俺の葉っぱ系の師匠だ。
[あゆ]まぁ〜どうだねひとつ、ここで物語を終わらせると言うのは。
[雨野]ふっふっふ・・・いいですね・・・
[初音]あのー、わ、私、晩御飯の用意が・・・
[楓]私も・・・用事が・・・
[雨野]いーのいーの、どうせ柏木家には偽善者年増と豪快怪力娘しかいないんだから。
[あゆ]酷い人だ
[雨野]まーね。
[あゆ]真似すんなや。
[雨野]まあまあ・・・とにかく、ここで「始めから終わってる物語」は終わりにしましょ
    う。
[あゆ]だね〜
[雨野]あうぅ〜、ふにふにぃ〜
[初音]あっあ、あの・・・
[あゆ]楓ちゃん〜(T_T)楓ちゃん〜(T_T)ぼくわ、ぼくわ〜(以下検閲削除)
[楓]あっ・・・・・
 初音と楓を愛でて遊ぶ二人の背後に、巨大な殺気を背負った存在が同じく二つ、ゆらり
 と立ちつくしていた。
[梓]姉さん・・・あたしは、あの初音を抱いてる方を殺るわ・・・
メキメキメキ・・・
 音を立てて梓の腕が、人の腕から鬼の凶器へと変貌してゆく。
[千鶴]そう・・・じゃあ、私は楓といる方ね・・・
ずぶずぶずふ
 千鶴の足元の畳がどんどん歪んでゆく。戦闘態勢に入った鬼は、急激に体重が増加する
 らしい。
[雨野]いや〜先輩!全くいい気分ですねぇ
[あゆ]ま〜ね
[雨野]これこそ、天国気分ってやつかなぁ・・・(ふにふに)
[初音]あっ・・・いゃだぁ・・・
[あゆ]全くだ(さわさわ)
[楓]・・・・・・(ぽーっ)
[雨野]んーーーっいい!いいねぇ!!
[あゆ]う〜ん、いいよぉ〜
[梓]そんなに天国気分を、
[千鶴]味わいたいのなら・・・
[雨野・あゆ]ほへ?
[千鶴・梓]いっぺん本当に行ってこーーーいっ!!

ざしゅっ・・・

 それが、我々が聞いた最後の音だった。



                BAD END


WARUAGAKI

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に行ってこーーーいっ!! ざしゅっ・・・  それが、我々が聞いた最後の音だった。                 BAD END
WARUAGAKI

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